ホールド・リラックスでは、リラクセーションさせたい筋を最大に伸張した肢位で23秒間、最大静止性収縮をさせたあとリラックスさせ、リラクセーションさせた筋を伸張させる方向に自動運動させて可動域を増大させる。

 

 

 ホールド・リラックスは可動域増大に効果があるが、この生理学的機序をKabatは説明していない。ホールド・リラックス手技の理論的根拠として考えられる経時誘導説と、Ⅰb抑制説およびⅠb抑制後の自動運動時の相反抑制説との矛盾点を述べる。

 

. 経時誘導説

 拮抗筋の最大収縮による運動ニューロンの最大興奮は、経時的効果として、拮抗筋の抑制と主動筋の収縮促通に導くSherrington の経時誘導の法則によって説明されている (Sullivan1982; Condon, 1987)。経時誘導の法則とは、主動筋の反射性活動に続いて生じる、拮抗筋の促通と主動筋の相反抑制を含む運動転換の過程のことである。脊髄イヌの交叉性伸展反射について得られた上記のSherrington1947) の実験結果がPNF技法の経時誘導の理論的根拠となっている。しかし、ホールド・リラックスが経時誘導を利用する手技ならば、最大静止性収縮をさせたあとにリラックスさせるのは矛盾する。

 

2. Ⅰb抑制説

 

 筋の伸張がゴルジ器官 (腱紡錘) と筋紡錘の両者を刺激するのに対し、ホールド・リラックスは筋の外的伸張を伴わず、筋の収縮のみで、ゴルジ器官しか刺激せず (Rash and Burke, 1974)、拮抗筋の最大随意収縮 (Maximal Voluntary ContractionsMVC) 後にゴルジ器官による抑制が生じ、拮抗筋にリラクセーションが得られると推定されている (Tanigawa, 1972; Etnyre and Abraham, 1986)。しかし、ホールド・リラックス手技がⅠb抑制を利用しているならば、最大に伸張した肢位で23秒ほど最大静止性収縮をさせたあとにリラックスさせ他動運動をさせる方が理論的であるが、PNFとしては変法となる。

 

3. Ⅰb抑制後の自動運動時の相反抑制説

 

 

 拮抗筋を最大に伸張した肢位で23秒ほど最大静止性収縮をさせ、Ⅰb抑制を得たあとにリラックスさせ、自動運動で動筋パターンで動く時に相反抑制により拮抗筋により深い抑制が得られ、動筋の運動時の効率性が増し、自動関節運動が増大するという説が考えられる(新井,2004)。

 

 

 

 Home