伸張位での筋収縮では筋腱接合部の損傷が生じやすい

 

 ホールド・リラックスは、教科書的には伸張位で最大静止性収縮収縮を行うと記載されている。しかし、老人を対象とした研究では、伸張位での筋収縮では筋腱接合部の損傷が生じやすく(Garrett,1996 )、中間位での静止性収縮が安全である(Ferberら,2002)。

また、ウサギの後肢の前脛骨筋をストレッチし電気的に等尺性収縮を起こさせる研究では、筋収縮を伴うストレッチ時と非収縮筋のストレッチ時の構造破壊に必要な力は15%しか違わなかったが、中間域でひずみを生じさせる力は収縮時が非収縮時の2倍以上の大きな力を必要とした (Garett,1996) 。

このデータは中間域での筋収縮の安全性を示唆している

 

ホールド・リラックスでも最大伸張位で静止性収縮させない

日本PNF学会では、自動運動による目的とする筋群の最大伸張位を確認し、10°から20°戻した肢位での軽度の伸張位でのホールド・リラックスを行っている。最大伸張位でのリスクを考慮するのがその理由である。

また、Knottも学生にはホールド・リラックスの方法として最大伸張位から10°から20°戻した肢位で最大静止性収縮を行うと教授していたことが分かっている。

広島県立大学名誉教授の清水・ミシェル・アイズマン先生が南カリフォルニア大学在籍中、Ms.Margaret.KnottからPNFの理論と技術を教授された時のノートに、ホールド・リラックスの方法として最大伸張位から10°から20°戻した肢位でのホールド・リラックスを行うと記載されている。 

SCF手技時はトルク発生力が大きい

SCF手技は、スティフネスの高まる中間位にて静止性収縮を行い、

最大トルク値の発揮と神経筋膜効果を得たあとの自動関節運動の改善を目的とする。

 

SCF手技はリラクセーション効果を得られる

変形性膝関節症21名を対象とした研究では、ホールド・リラックス手技と

SCF手技の両手技がストレッチ手技より膝伸展自動関節可動域が増大された(Masumoto et al., 2013)。

健常者を対象とした研究でヒラメ筋H波が、肩甲骨後方下制のSCF手技 (井手、2018(首都 大学東京 修士論文))、骨盤周囲筋群へのSCF手技で抑制効果が認められ(Shitratani,2014; Arai,2016; 重田,2018; 竹澤、2018) 上位中枢のラクセーション効果を示唆した。

伸張位での筋収縮は筋力が低下する

1) 60秒のアキレス腱のストレッチ 後に筋力の低下が30分続く (Kay, 2009)。

2) 33分間に5~10秒を13回、底屈筋の痛みが生じない程度の最大ストレッチ後に底屈筋の最大 静止性収縮力は有意に減弱した(Fowles, 2000)。

 

SCF手技はリラクセーション効果があるが、随意収縮力が増大する

1) 5名の体重全負荷が許可された足関節骨折患者を対象に、 SCPD 手技と足関節底屈筋群の持続伸張(SS)手技を無作為に行い、各手技後の足関節底屈筋群の最大筋力値を二元配置分散分析した結果、SS 手技より SCPD 手技で有意な足関節底屈筋群の最大筋力が増大し、萎縮筋の運動単位の動員の増大が推察された。

最大足関節底屈筋群の増加により SCPD 手技による遠隔後効果は抑制ではなく促通である可能性が推察され、遠隔部位の萎縮の予防・筋力強化の適応の可能性が示唆された(白谷、2018)。

 

2) モビライゼーション PNF 手技の一つである肩甲骨後方下制および前方挙上の

中間域での静止性収縮促通(SCPD、 SCAE)手技と足関節背屈方向への持続伸張(SS)手技の後効果として、足関節背屈自動関節可動域(AROM)の改善と自覚的疲労度の差異が生じるか検証した。 対象は、通所リハビリテーション利用者 14 名

(整形外科疾患 9 名 、 脳血管疾患 5 名)で、平均年齢は、81.7(±7.6)歳 。

対象者に肩甲骨 SCPD 手技 、 肩甲骨 SCAE 手技 、 SS 手技を無作為の順序で行った。

多重比較検定の結果、SS 手技に比べ  肩甲骨 SCPD 手技と肩甲骨 SCAE 手技とも足関節背屈 AROM を有意に増大させた。 自覚的疲労度においては有意差を認めなかった 。

本研究結果より 、肩甲骨 SCPD 手技と肩甲骨 SCAE 手技は SS 手技と比較し、足関節背屈 AROM が増大することが示唆された (崎野, 2018)。

 

3)  整形外科疾患患者に対し 、 モビライゼーション PNF の手技の 1 つである骨盤前方挙上の中間域での抵抗運動による静止性収縮の促通(SCAE)手技および骨盤後方下制の中間域での静止性収縮(SCPD)手技を行い昇段能力に及ぼす即時的効果を検証した。対象は、一側下肢のみ整形外科疾患を有し 18cm の階段が手摺りを持たずに一足一段で昇段可能な 13 名であった。各対象にSCAE 手技 、SCPD 手技、コントロールを無作為に1時間以内に実施してもらった。 12 段の階段を一足一段で昇段してもらい時間を計測し介入前後の変化率を指標とした。

多重比較検定の結果、SCAE 手技と SCPD 手技はコントロールに比べ有意に昇段時間の短縮を認めた。また、SCPD技は SCAE 手技より疼痛の軽減も認めた (田中, 2018)。