PNFとは

1940年代の後半に、アメリカで開発された手技です。医師であるKabat博士がポリオ後遺症患者の筋収縮を高めるための生理学的理論を構築し、KnottとVossの理学療法士と一緒に開発したPNF (proprioceptive neuromuscular facilitaition;固有受容性神経筋促通法)である

ポリオ後遺症患者に対するリハビリテーションからSherringtonの研究を基にした神経生理学的原理を引用し理論化した

弱い遠位筋の反応を(機能的に関連のあるより強い近位筋からの発散によって)促通するには最大抵抗と伸張の効果を確認できるらせん的および対角線的な特徴をもった集団運動パターン組み合わせが有効であることを発見した

文献

Knott M, Voss DE: Proprioceptive Neuromuscular Facilitation: Patterns and Techniques. New York. Harper & Row Publishers, Inc. 1966.

 Voss DE, Ionta, MK, Myers BJ:  Proprioceptive Neuromuscular Facilitation ; Patterns and Techniques. Third ED. p.291-311. Harper & Row. New York. 1985.

 

PNF運動パターンとは

“groove”

 PNF運動パターンは対角線上でのらせん状の運動パターンであり、複合面上で行われる(矢状面と水平面および前額面の三次元の組み合わせの動き)

人の力強い粗大運動を観察すると、対角線上の動きと回旋の動きが加わっており、矢状面、水平面あるいは前額面の単一基本面上の運動はきわめて少ない

上下肢のPNFでは、上肢 (肩関節)・下肢 (股関節)にそれぞれ4通りの運動パターンがあり、さらに中間関節である肘・膝関節の伸展位(不動)、屈曲または伸展を伴う3通りのパターンを有する

PNF運動パターンの特徴である対角線上をらせん状に運動するパターンを促通するために,“groove (溝)”を頭に置いておかなければならない               

“groove (溝)”とは,PNF運動パターンの延長域から短縮域までに働く主動筋群を適切にまたは最大に収縮させるための適切な運動ラインである (Voss, 1985)

 

そのラインは、ヒトの肩峰と上前腸骨棘を結ぶラインを目安とする

 

 

固有受容器

固有受容器とは

固有受容器とは、①位置、②動き、③力の感覚受容器である

①位置の感覚とは、体各部の相互関係を知る感覚、②動きの感覚とは、運動の方向と速度を知る感覚、③力の感覚とは、抵抗に抗した肢位を保持する時に筋力を知る感覚である

固有受容器を刺激する方法として、関節の牽引・圧縮、筋の伸張、抵抗運動、PNF運動開始肢位などが挙げられる。Kabatは、全運動範囲にわたる最大抵抗を強調し、最大抵抗を使用することで、弱化した筋への発散効果を最大にさせると指摘している(Voss, 1985)

 

 

固有受容器の意義

岩村ら (1994, 2001) は両側の統合は脳梁線維を介して行われていると考察しており

非麻痺側の固有受容器による麻痺側の運動機能の代償は脳梁線維を介して行われていると示唆される

非麻痺側のPNFやモビライゼーションPNF手技による固有受容器の刺激は

患側へ転移され、患側の運動機能を高める可能性がある

 

このことから、麻痺側だけでなく、非麻痺側へのアプローチが重要である

 

最大抵抗

運動開始時と終了時には弱い抵抗で行い、可動域の中間1/3あたりで最大の抵抗を加える

Gellhorn(1949) はサルの大脳皮質に電気刺激を加え、関節固定時と非固定時の誘発筋電図を比較したところ、関節固定時で筋放電が著しく増大した。このように、抵抗は筋収縮を促通するが、脊髄後根をあらかじめ切断しておくとこの現象が消失することから、固有受容感覚系の刺激が皮質刺激による運動に促通効果を与えることを発見した。Gellhornはこの現象を固有受容性皮質性促通と呼んでいる (柳澤, 2001)

最大抵抗は運動パターンの促通に一番大事なものであるが、最大抵抗時、息を止めて力むと血圧が上昇する可能性があるので注意し、持続的努力が有害な場合は漸増して行うようにする (バルサルバ現象の防止: Vossら, 1985)

求心性収縮によってPNFパターンを用いる場合の最大抵抗は、1つのパターンを2~3秒間のゆっくりした運動を3~10回繰り返せる程度の負荷とする